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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和51年(ネ)74号 判決

昭和五一年(ネ)第七四号事件被控訴人、同年(ネ)第七八号事件控訴人

(以下第一審原告という)

徳舛冨美子

右訴訟代理人

内山弘道

昭和五一年(ネ)第七四号事件控訴人、同年(ネ)第七八号事件被控訴人

(以下第一審被告という)

追谷行子

右訴訟代理人

豊島武夫

主文

原判決を次のとおり変更する。

第一審被告は第一審原告に対し金一〇二万八七三三円を支払え。

第一審被告は第一審原告に対し金一七六万七四〇〇円の支払を受けるとひきかえに別紙目録(一)記載の建物から退去して同目録(二)記載の土地を引渡せ。

第一審原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

この判決は仮りに執行することができる。

第一審被告が金二〇〇万円の担保を供するときは建物退去土地引渡の仮執行を免がれることができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

第一審原告は

「原判決主文第一項の2を取消す。第一審被告は第一審原告に対し金三万二一三三円と昭和四九年四月一〇日から別紙目録(二)記載の土地明渡ずみに至るまで一ケ月金三万六〇〇〇円の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、また、第一審被告の控訴に対し控訴棄却の判決を求め、原審における昭和四七年一二月八日から昭和四九年四月九日まで一ケ月金七二〇〇円の割合による金員の請求を合計金三万二一三三円に減縮し、昭和四九年四月一〇日から明渡ずみまで一ケ月金七二〇〇円の割合による金員請求を一ケ月金三万六〇〇〇円の割合による金員請求に拡張した。

第一審被告は、

「原判決第一審被告敗訴部分を取消す。第一審原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審を通じて第一審原告の負担とする。」との判決及び敗訴のとき担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求め、また、第一審原告の控訴に対し「第一審原告の控訴を却下する」との判決を求め、予備的に「第一審原告の控訴を棄却する。控訴費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。第一審原告の請求拡張部分について請求を棄却する。」旨の判決を求め、第一審原告の請求を拡張するためのみの本件控訴は不適法であると述べた。

第二  当事者の主張〈省略〉

理由

一第一審被告は第一審原告の本件控訴が請求を拡張するためにのみ原審判決について不服を申立てた場合に当るから却下されるべきであると主張する。

本件記録によれば、第一審原告は第一審被告に対し本件建物収去、土地明渡とあわせて昭和四七年一二月八日以降明渡ずみまで一ケ月金七二〇〇円の割合による金員の支払を求めて本訴を提起し、原審において右金員請求中昭和四七年一二月八日から昭和四九年四月九日までの期間の分について一部棄却されたほか、その余の請求が認容されているのにかかわらず、右期間内の金員請求を原審認容の限度に減縮し、しかも、昭和四九年四月一〇日以降明渡ずみまで一ケ月金三万六〇〇〇円の支払を求めて請求を一部拡張するため本件控訴を提起したものと認められるが、かかる場合第一審原告は原審判決に対し独立して控訴を申立てることは許されないものと解すべきである。

しかしながら、第一審原告の控訴は、第一審被告の控訴により本件が当裁判所に係属した後において申立てられたことは記録上明らかであり、従つて、第一審原告は第一審被告の控訴に付帯して控訴を申立て、これに際しその請求を拡張することは当然許されるものと解せられるところ、第一審原告の本件控訴は右付帯控訴としての要件に欠けるところがないから、これを以て不適法として却下することは相当でない。

よつて、第一審被告の妨訴抗弁は採用できない。〈後略〉

(西岡悌次 富川秀秋 西田美昭)

目録〈省略〉

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